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登山道を探して、細い谷に入った。ちろちろと雪解け水の流れるその際にはザゼンソウの花が咲いている。嬉しい出発だ。

取り残されたような荒れた田んぼに続く溝の傍には、今は陽の光が届かず花びらをとじてはいるけれど、春の花群れの咲く姿を見つける。あぁ、この花の開く姿を帰りの楽しみにとっておこう。


言葉に尽くせぬ展望・・・越前甲(越前大日山)1319.6m

横倉に向かうと、消防の方に車を止められ「熊が出没してますから気をつけて行ってきてください。」と、チラシを配ってくださった。雪がふさいでいる林道の手前の広場に車を止める。白い雪に覆われた越前甲をバックに八反滝の流れが目をひく。山菜採りの方が川筋に行かれる姿を見送り登山道を探す。

夏道を探すが、雪で道形はない。名も無き細い谷ともいえぬ流れに沿い、荒れ果てた田んぼの跡の溝を渡り、林道に交差すると小さな祠にお地蔵様が祭られていた。

ここからまたススキの枯れた田んぼを登って林道に這い上がり、谷を詰めようとするが薮が激しく支尾根を巻いて林道をなお歩く。そして広々とした浅い谷の縁を登ることにする。登るその先には、青空がちらっと覗いている。あそこまで、とにかく行こう。

青空に飛び出す。すると、私は雪原と越前甲の岩壁が望む素晴らしい景色の中に立っていた。ゆっくりと休憩をして、地図を広げる。岩壁には鷲鷹らしい鳥が翼を広げているのが見えた。

支谷の流れを覆う雪を踏み抜かないように、そろと足を忍ばせて渡る。足の下で、谷川の流れの音がして、ちょっぴりスリリングである。

幹の途中から、バッキッ、バキバキッと折れて飛び散った木々の破片がそこかしこにあり、雪崩の力の恐ろしさを見せ付けている。

岩壁を眺め眺めて、そのなだらかな谷筋の雪原を上部に向かい、途中から右の支尾根に這い上がる。支尾根から直登を試みようとするが、尾根上は日当たりがいいのか、雪がつきにくいのか薮が見えはじめ諦める。

 野津又川の支流から声がして、当初の計画であった大日峠に向かう夏道はこの谷の下であることを確認する。いつしか完全にバリエーションを歩いている。

 夏道を歩く登山者を眺めながら休憩をしていると、一人の登山者が私たちの足跡を辿ってこられた。「もっと雪がついていれば、この尾根直登も可能なのですが、先週から一気に雪が融けましたからね。」「だめなら、谷をトラバースして大日峠へ向かうこともできますし、様子を見ながらですね。」

 岩壁の下を緊張しながらトラバースして大日峠より一つ西側の鞍部に向かう。「落石があるよ。気をつけて!」と夏道を歩く登山者から声が飛ぶ。

 落石の跡が見える斜面を、速やかにトラバースする。鞍部に近づくと、夏道の谷から県境尾根の鞍部に直登してきている一人の足跡がでてきた。峠を回らないで、近道をした人がいるらしい。

 夏道に合流すると、「ここからは泥アイゼンだ。」と友の声。県境尾根は日当たりがいいのか、すっかり雪が融けている。夏道を来た登山者は8時に登山開始したとのこと、こちらが四苦八苦している間に、夏道ルートから来た人に越されたということになる。

「すごいとこを挑戦されていたんですね。」「たまたま挑戦することになりまして。」と笑い合った。

 しばらく泥アイゼンをがまんし、やがて登山道を離れ左に振って雪面に出る。この展望の素晴らしさ。白山の白が青空に映え美しい。展望を楽しみながら潅木を縫い雪面をぐいぐいと登っていく。また、尾根道に戻り泥アイゼン、しかし暑くてたまらず、今度は右のブナの斜面に逃げる。

 右の斜面は一面のブナ林、誰も登山道を外してこの斜面を登らないのが不思議だ。ブナの木々の間からは加賀大日山が見えて、気分よく登る。

 斜面を這い上がると、ここからは、尾根は雪稜となり、大展望である。

 後から来られた登山者と休憩しながら山の話に花が咲く。「経ガ岳に行こうと思ったんですがねぇ、六路師スキー場の上の三角山あたりは熊の巣でしてね。それがまた登山道のすぐ近くなもんでね。」「先週は縫ガ原山に相棒がいったんですが、薮がひどかったらしいですよ。」「荒島岳で最近遭難事故があったんですよ。」とか、色んな地元情報が飛び交う。「そうなんですか。」と言うと。「県外の方ですか?」と聞かれた。

 ここからは、山頂へと続く雪稜を黙々を歩く。振り向けば、大展望をバックに雪稜を登ってくる登山者が点となり絵になる風景である。もう頂上かと思うがなかなか頂上にとどかず、もうここか、ここかと一歩を踏み出す。

 頂上は無木立の広い雪原である。「福井の雪山」には、「越前甲の頂上は完全に雪に覆われ、天気が良ければ、何故冬山に登るのかその理由が分かるのもこんな時である。」と書かれている。今日は雲一つない晴天、そんな、風景が広がるのである。

 抜けるような青空に真っ白な白山がどっしりと横たわり、これまた白い別山から三の峰、だんだん南に振っていくと赤兎山、取立山、法恩寺山と重なるように経が岳がそびえる。なお南には荒島岳、能郷白山、姥ガ岳、銀杏峰、部子山とそうそうたる山々に取り囲まれている。そして、すぐ手の届きそうな所に加賀大日岳が、雪稜の向こうでおいでおいでと呼んでいる。

 登りのあえぎあえぎの急登では、もうここまでと思っていたが、雪稜を見ると行きたい気持ちがむくむくと起き上がってきてしまうのが不思議だ。ここから加賀大日へは登り1時間から1時間半である。

 当初は足を伸ばす計画であったが、あまりの展望の素晴らしさに、この山頂で豊かな時間を過ごすこととなる。白山とさしむかいでビールで乾杯、Iさん夫妻とそれぞれにうどんの鍋を楽しみながら話が弾む。あっというまに1時間半が過ぎてしまった。

「福井の雪山U」に載っていた尾根は、今は薮で歩けないが、この尾根だねと確認する。長そうな尾根ではあるが雪のついている時に、また一度歩いてみたい。

 下山は夏道の取り付きを確認しようと、大日峠を回ることにする。県境尾根の福井県側は、絶壁であるが、石川県側はブナ林がどこまでも続いている。大日峠からは、加賀大日山がブナ林向こうのに美しく見えた。

 ここから谷に下って行くが、この谷筋にもまた、雪崩に破壊された木立の枝が散らばっている。時期を間違えれば、恐ろしい雪崩に巻き込まれるのだと、その爪あとが教えてくれるのだ。

 自然の美しさに感動し山に入り、へし折られたこの木々たちの姿に自然の厳しさと自然に生きるもののたくましさを学び、心の底に焼き付けながらひたすら林道までの雪面を下った。雪の融けだした林道脇には、蕗のとうが花を咲かせていた。

 あの花は、もうひらいているに違いない。イチゲの薄紫の花群れは誰も通ることのないその場所で、燦燦と陽をあびて春を謳っていた。


2005年4月24日(日)

越前大日山(越前甲)
青一色の空
横倉林道―822P−トラバースー県境稜線鞍部―越前甲―大日峠―夏登山道―横倉

2005/04/26(Tue) 00:06:32  [No.144]


とっちゃん、こんばんは。
越前甲は何年か前、冠山(途中敗退)の翌日連チャンで目指しましたがあまりの強風にまたまた敗退。
2連敗した思い出の山です。大日峠からの下りの谷筋で豪快に滑ったことだけがいい思い出でした。
あの時は予定外の山でガイドも地図もなく、頭の中にあったガイドブックを頼りに行ったのですが、
ほとんどの人はあまごの宿すぐ近くの尾根に取付いていました。思えばそれが積雪期の一般ルート
だったようです。
初めて山頂に立ったのも、沢から若丸山を目指しながらアブの攻撃に恐れをなして急遽転進した時でした。
どうもこの山は仕方なしに登る山のようです。(越前甲さんごめんなさい^_^;)
越前甲から大日まで縦走できたらよかったのにね。

                      山日和

2005/04/26(Tue) 22:46:33  [No.150]


こんばんわ〜。

大日峠からの下りの谷筋で豪快に滑ったことだけがいい思い出でした。

そのあたりは、今回すごい雪崩のあとでした。こわ〜。

> ほとんどの人はあまごの宿すぐ近くの尾根に取付いていました。思えばそれが積雪期の一般ルート
> だったようです。

今回は多分全員、夏道だったようです。こちらは、予定外のバリエーションでしたが、かえって楽しかったです。

(越前甲さんごめんなさい^_^;)

雪山、晴天時の頂上からの眺めは一級品ですよ。

> 越前甲から大日まで縦走できたらよかったのにね。

 はい、当初計画どうりに、ほんと行きたかったです。でも、同行のご夫婦は以前に加賀から加賀大日は行っておられたし、奥様は仕事疲れがとれず、私も疲れがたまっていたので、結果的にはこれでよかったです。

 鈴鹿のアカヤシオか大日山か迷っておられたようで、私を誘うなら雪の大日山と考え、アプローチも自宅からなら、岐阜回りが近いのに、わざわざ木の本回りで同乗させてくださったりと、心使いくださって、ありがたいです。

2005/04/26(Tue) 23:37:32  [No.156]


とっちゃん こんばんは

> 登山道を探して、細い谷に入った。ちろちろと雪解け水の流れるその際にはザゼンソウの花が咲いている。嬉しい出発だ。

そういえば、以前、おりてきたときにザゼンソウ見たぞ。
山日和氏と私は、なぜか地図も持たずに、
このあたりをほっつき歩いて、峠から滑り降りて帰ってきたんだがや。千駄ヶ谷。

そんとき、上の尾根のほうを何人か歩いてたけど、
そっちを行ったんやね。

>  頂上は無木立の広い雪原である。「福井の雪山」には、「越前甲の頂上は完全に雪に覆われ、天気が良ければ、何故冬山に登るのかその理由が分かるのもこんな時である。」と書かれている。今日は雲一つない晴天、そんな、風景が広がるのである。

雪の頃は未踏だから、またそのうちに行ってみよっと。

>  当初は足を伸ばす計画であったが、あまりの展望の素晴らしさに、この山頂で豊かな時間を過ごすこととなる。白山とさしむかいでビールで乾杯、Iさん夫妻とそれぞれにうどんの鍋を楽しみながら話が弾む。あっというまに1時間半が過ぎてしまった。

そうですね。
のんびりと過ごす山の時間が、これまた、このうえなくかけがえの無いひとときなのですね。

よい山旅を!
                       洞吹(どうすい)

2005/04/27(Wed) 00:00:56  [No.159]


洞吹さん、こんばんわ〜。



> そういえば、以前、おりてきたときにザゼンソウ見たぞ。

細い雪解けのながれも、のどかな春を思わせ心がほんのりしましたよ。

> 山日和氏と私は、なぜか地図も持たずに、
> このあたりをほっつき歩いて、峠から滑り降りて帰ってきたんだがや。千駄ヶ谷。

(@_@)(@_@)お二人ご一緒でしたか。歓声が聞こえそう。

> 雪の頃は未踏だから、またそのうちに行ってみよっと。

短時間?でいけるので、来年行ってみてください。でも、あの強烈な雪崩後を見ると・・・巻き込まれたら大変、時期とコース選びがポイントかな?
>

> そうですね。
> のんびりと過ごす山の時間が、これまた、このうえなくかけがえの無いひとときなのですね。

10時半くらいに頂上についちゃったから、12時には加賀大日に行けたのやけど、翌日の足の浮腫の状態からいっても、あの日はゆっくりしてよかったんだと思います。次回は、加賀まで行きたいです。

2005/04/27(Wed) 19:00:32  [No.166]


こんにちは、アチコチに出没しますねえ(^^)
どこに有るのだ・・・越前甲とは。
100円地図で捜せば、なんとR416ドン詰まりでは有りませんか。
この道、白山に行くときに迷い込んだ、良い道が横倉まで行ってますね。
大日山、小大日と有る。
九谷磁器窯跡と有る、チョツト興味有る所ですね。

またいつか行ってみようです     緑水。

2005/04/29(Fri) 20:20:26  [No.168]


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