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  長靴をはいて2・・(ひとりあるき) 投稿者:とっちゃん(こと)ころぼっくる
長靴をはいて2・・(ひとりあるき) (画像サイズ: 800×600 111kB)

明日は大晦日、残すところ一日で今年が終わる。少しはわがままも言える女友達や妹さえ、さすがに今日は無理だという。

心に迷いを残したまま、整形外科へと今年最後のリハビリに行く。空を見上げると、土山の里の方面は青空が広がっていた。

今日は、仙ガ岳だと聞いている山日和さんは、鈴鹿南部の三重県側きっと今年最後の青空の山を味わっているだろう。

綿向山は雲の中に隠れている。青空が期待できる土山の里山である能登ガ峰にしようかとも思ったが、今年はまだ一度も霧氷を見ていない。今日の綿向は確実に綺麗な霧氷が見られるだろう。

明日は、お正月の餅つきもある。いつもは妹一家も来てくれて、妹のダンナ中心に杵と木の臼で餅をつくのだ。今年は、仕事の都合がつかず、大学生の息子中心に家族で協力して臼杵の餅つきとなる。やっぱり行こう。今日しかない。

リハビリの病院から、その足で車を走らせた。西明寺を過ぎると、その先は除雪がされていなかった。そのとたん、車は斜め45度にスリップした。スダッドレスを履いたジムニーで4WDハイ2速に入れていたが、いつも滑るはずもないようなところで滑るのが私の得意の技である。

水木林道入り口の駐車地に車を置いて歩こうか。しかし時間が押している。一台の車の轍が林道に続いていたのをいいことに、4DWローのL速に切り替え、注意をして林道に入ることにする。

ゆっくりと、止まらず林道を走る。途中まで入ると林道脇にラウンドクルーザーが駐車していた。先行車の横をぶつけないようにすり抜け、そのまま林道を登っていく。

だんだん雪は深くなってきて、普通車なら腹をすって登れないだろう。先行車両の轍のない林道をドキドキしながら進む。帰りはどうなるんだろう。滑ってどうかなっても、だれも助けてくれる人もないだろう。チェーンさえ自分で巻けなし、スコップは持っていてもスリップしたら抜け出す方法も知らないのに、おおちゃくをしている自分がいる。

止め時は竜王山の登山口かと思っていると、先ほどの車の方だろうか、足跡は竜王山の登山口から登山道を登っていた。

もう少し奥まで行けば林道が広がっている。きっとそこには柵があるだろう。手で開くことのできる柵だが、その柵を自分のむちゃの終点にしよう。

一台も無い林道で、ジムニーを帰りの方向に向けた。車が帰りの方向に向いた、それだけのことで気持ちが少し楽になった。雪原と化していた朝明の駐車場で覚えたように、ジムニーを前後前後に動かせて、車の周囲を踏み固めた。

スリッパから長靴へ。それは、骨折で軽いびっこ歩きの日常から山の人となる異次元の世界に足を踏み入れる履き替えでもあった。

正午、車出発。遅い出発となった。行けるとこまでいこう。行けるなら行者コバのブナの霧氷を見たい。そう思う心の底にでは、時間は気にせず頂上まで行って、北峰で私を解き放したいと呟いていていた。

すでに表山道からの登山者が、水木林道を下っているのだろう。林道に残る足跡は帰りの方向を向いていた。今日は、水木林道から綿向をめざした人は誰もいないのだ。

林道の途中に大きな落石が道をふさいでいる。雪の無い時期なら、落石は自己責任で柵を開けて車を入れたが、さすがに今日は、そんなことをしなくてよかったと思う。

橋を渡る。さてここから先はどうしよう。奥の平から小屋をめざそうか?昨年はそのコースで、踏跡は一つも無く妹一家とのファミリーラッセルがしんどかった。今日も、そちらへ向かう踏跡は無く、一人では小屋から引き返しとなる。下山の踏跡のある林道を表山道の方向にとった。

表山道を登って、下山をしてきた一人の男性に出会った。「これからですか?」と、不思議そうな顔で聞かれた。心配をかけるようで申し訳なく、これから頂上をめざしますとは言えず「はい、時間を見て、いけるとこまで。」と答えた。

「頂上はどんな様子でしたか?」と聞くと「5合目の小屋までで体力を使っちゃって、小屋でお昼を食べて帰ってきたんです。」「数人の方がまだ小屋におられましたが、皆もうじき下山されるでしょう。」

林道の途中からあざみ小屋へ直接踏跡があり、吹き抜けのあざみ小屋で、リュックを下ろし小休止をした。

植林の登山道をジグザグと登る。五合目の小屋に着くと、一気に視界が開き、竜王山から続く尾根の木々も霧氷で白く美しい。話し声のもれる小屋にはおじゃませず、そのまま登山道を行者コバへと向かう。雑木の斜面の木々には針のように繊細な霧氷が4cmくらいのびている。

あれはいつだったか、旅をする蝶アサギマダラを見た場所はこのへんだった。ここからは、例年霧氷のプロムナードとなる。

行者コバに近づくとブナの霧氷が現れた。やっぱり、ブナ林の霧氷はステキだ。ゆっくりくつろぐなら、ここで妖精と戯れて時をすごすのもいいだろう。

やっぱり、行こう。冬道をたどって山頂に向かう。見上げる木々の霧氷の上にはいつしか青空が広がっていた。なんだか、そんな気がしていた。重たい雲に隠された山にきっと青空がのぞくようになるだろうと。願わくば、もう少し待っていて欲しかった。バラパラと落ちる霧氷の片を踏み登る。

稜線分岐に出ると北峰への踏跡はない。とにかく一度山頂に挨拶にいく。誰一人いない山頂からは青空の向こうに雨乞がどっしりと座り、その右手には鎌ガ岳の雄姿が見えた。山日和さんが行っているだろう、仙ガ岳をはじめ鈴鹿南部の山も一望の好天になったが雲の動きが早い。他にも誰かここから見える山に登っているだろうか。

雪原の眼下には、霧氷に覆われた木々の白が美しく、またかわいらしく並び立ち、向こうに控える雨乞の前景となっていた。頂上のケルンの周りに踏跡は集中し、そこからたとえ、一歩さえも踏み出す人は一人もいない。なんて不思議なことだろう。ブナの木平に続く稜線はバージンロードだった。

熊野を基点にして、ブナの木平から南尾根を下り塩の道峠から熊野に下るコースはSハイ岩野さんの、冬の定番のナイスコースである。

せめてブナの木平までと、ふと迷ったが十分に時間があるわけでもなかった。頂上でワカンを付けて折り返し分岐までもどり、バージンロードである北峰へ新しい一歩を踏み入れた。

嬉しさが、一歩一歩胸の中に満ちてくる。明神谷側の雪尻を踏み抜かないように、それだけを気をつけよう。湾曲した腕をせいいいっぱい広げた大きなブナの木が雪と霧氷をいっぱい纏って左の斜面に立っていた。

少し歩くと誰が名づけたか「幸福の木」の標識、ブナの木がアーチの形になっているのだ。昨年のファミリー雪山で、姪たちと一緒に雪に腹ばいになって潜った木だ。これとおなじような木を御池岳の丸池の近くでも、以前見つけた。

どんなふうにして、ブナの木はこんな姿になったのだろう。一本一本ちがうブナの木には、どんな生きざまがあるのだろう。

すくっと、真っ直ぐに立つ木は順調な人生のように思えて、奇異な形の木を見つけて喜ぶことができないのは、自分の人生と木々の困難な生きざまを重ねてしまうからだろうか。困難が幸福に変わる瞬間、木々も人も報われるのだろうか。

一歩一歩ワカンで歩く尾根の凍てつく木々の隙間から、なだらかな曲線を描く雪尻の向こうから、雨乞がこちらをじっと見守ってくれていた。

北峰への鞍部に向かえば、明神谷側の雪の斜面に黒い亀裂が筋をひいていた。いつかあそこから、谷に向かって一気に雪崩れていくのだろうか。

竜王分岐から北峰に向かって歩く。ふーと心は澄んでいく。やっぱりここまでこなくっちゃ、綿向に来た気がしないのは私だけだろうか。北を眺めるが、霊仙の方向は雲に覆われて見えなかった。

いつしか青空は、また流れる雲に覆われてしまい、午後3時の北峰からは白んだ空の向こうに霧氷をまとったブナの木々が美しく立ち並ぶ綿向山南峰の姿があった。

林道に向かって下る頃には里のお寺の鐘がぐわーん、ぐをーん、と鳴り響き、西の空には夕日が赤く燃えた。そして鹿の足跡の残る雪の白さは、いつしか夕陽の残照で淡いオレンジ色に染められていた。
                         (夕陽の色のあたたかさ)

                      リハビリハイク 2・・・綿向山

2006/01/14(Sat) 16:18:10  [No.1523]


とっちゃん、こんにちは(^^)

> 綿向山は雲の中に隠れている。
明日てるさんたちが登る山ですね。まだ知らない山なのでいつか行ってみようと
思います。

> 明日は、お正月の餅つきもある。
いいなぁ。僕の実家も僕が小学生までは叔父や叔母も帰ってきてしていたのだけど
そういう習慣もいつのまにやら消えてしまいました・・・。いまでも餅好きなのは
母がよく知っていていつも正月にくれます。子供達にも親戚の絆って点でも集まる
機会があるこの習慣はいいものだったなぁ、と毎年話します。

> スダッドレスを履いたジムニーで4WDハイ2速に入れていたが、いつも滑るはずもないようなところで滑るのが私の得意の技である。
スタッドレスは過信しないようにね。路面の雪質や角度で大きく性能の違いが出ます。

> だんだん雪は深くなってきて、普通車なら腹をすって登れないだろう。先行車両の轍のない林道をドキドキしながら進む。
こういうの、迷いますよね。
04年の沢登りで仙ケ岳へ行ったときもまだ林道は行けましたが上を見てなんか落石
が来そうで手前で停めました。正解でした。帰路で林道に動かないデカイ岩が落ちて
きていました。奥へ行ってたらあの大岩で車が林道を戻れなかったです(^^;)
http://homepage3.nifty.com/komachans3/yama3/sengatake.htm

また先日の芦生でも研究林事務所前まで入り込めましたが、どうも手前の木工室の
屋根の雪が気になるし、「守る会」の会員でもあるのでやはりルールは守ろう、と
研究林の外に駐車。帰ってきたら屋根からの雪が落ちていて道が雪で封鎖されてい
ました。「よかったなぁ。帰れないところだったなぁ」とBAKUさんと胸をなで下ろ
しました。

林道周囲の斜面を注意深く見ておくことは重要でしょうね。


> チェーンさえ自分で巻けなし、スコップは持っていてもスリップしたら抜け出す方法も知らないのに
ギエッ(@_@); 練習しといてよ〜(^^)

> 林道の途中に大きな落石が道をふさいでいる。雪の無い時期なら、落石は自己責任で柵を開けて車を入れたが、さすがに今日は、そんなことをしなくてよかったと思う。
(^^)(^^)

> 少し歩くと誰が名づけたか「幸福の木」の標識、おなじような木を御池岳の丸池の近くでも、以前見つけた。
へぇ〜φ(。。;)メモメモ

う〜ん、リズム感のあるいい報告文だなぁ。とてもマネできないです(^^)
このまえ読んだ藤沢周平の「海鳴り」を読んでいるような心地よい感じでした。
また鈴鹿の山で!

2006/01/14(Sat) 16:51:32  [No.1524]


  Re: 長靴をはいて2・・(ひとりあるき) 投稿者:とっちゃん(こと)

矢問さん、こんばんわ〜。

今日は、いいお天気になりましたね。どっかの山に行かれたのかな?

> 明日てるさんたちが登る山ですね。まだ知らない山なのでいつか行ってみようと
思います。

囲炉裏の仲間でいかれるようですね。panaちゃん、春風さんもご一緒のようですね。

矢問さんには、ものたらないんじゃないかな?でも、お天気がよければ、展望はばつぐんですよ。一番身近で、霧氷を見られる山でもあります。もちろん日によりますが。今日は気温がたかかったから、霧氷は無理だったかな?

> いまでも餅好きなのは母がよく知っていていつも正月にくれます。

矢問さん、お餅好きなんですか?私もそうなんです。妹のダンナとそのお母さんは、「こわ餅」(餅米+うるち米を入れて餅をつくと、お米のつぶつぶ入りの餅ができる)が好きなので、今日、臼杵で餅つきに来てました。

> スタッドレスは過信しないようにね。路面の雪質や角度で大きく性能の違いが出ます。

そうですね。3年前だったか、先行の普通乗用車が滑らずに行った道ですべってしまいました。矢問さんは車のことや運転技術に詳しいから、機会がありましたらポイント教えてくださいね。

2006/01/15(Sun) 19:23:40  [No.1542]


通称 とっちゃん(こと) 本名 ころぼっくる さん、こんにちは。
出始めると、たて続きに名文・美文が出てくるのですね。
もう、引き込まれてしまいます。

しかし、朝明と明神平の間に綿向山があったのですか。
リハビリ山行きにしては、スパーンが短いのですね。
しかも単独。しかも正午出発、夕陽に照らされ下山。
とてもリハビリとは思えない、信じられない山行きです。

とっちゃん(こと)さんが、ますます分からなくなりました。
やはり、「妖精」?

> 嬉しさが、一歩一歩胸の中に満ちてくる。
> (夕陽の色のあたたかさ)

メルヘンの世界をありがとうございました。       伊勢山上住人

2006/01/15(Sun) 10:33:12  [No.1535]


  Re: 長靴をはいて2・・(ひとりあるき) 投稿者:とっちゃん(こと)

伊勢さん、こんばんわ〜。

雨に心が落ち着いて、一気に書いちゃわないと、晴れたら山恋しくて落ち着かなくて書けないんです。

> リハビリ山行きにしては、スパーンが短いのですね。
> しかも単独。しかも正午出発、夕陽に照らされ下山。
> とてもリハビリとは思えない、信じられない山行きです。

そうですね〜。どうにもならないと諦めきっているときは、いいんですが、一回でも少し山に入っちゃうと、次いきたくなっちゃって。まだ、固定装具つけてのリハビリなのに、無茶しちゃうんで、自重自重と言い聞かせてます。

> とっちゃん(こと)さんが、ますます分からなくなりました。
> やはり、「妖精」?

ああよかった、やまんば?って聞かれたらどうしようって、心配しちゃった。

2006/01/15(Sun) 19:29:43  [No.1543]


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