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銀杏峰・・・・雪の海に浮かぶ真白き平原の山 (画像サイズ: 800×600 99kB)

ヤマセミの声がした。雪解け水が流れる清滝川沿いの木に、つがいでとまるその鳥は私の大好きな鳥である。こんな真近で見られるなんて、なんだか幸先のいい今日の始まりがなんとも嬉しかった。

I氏ご夫婦との三人での山歩きは、昨年の春、三重岳・武奈が獄をご一緒させてもらって以来である。快活なご主人とさっぱりした奥様の懐かしい笑顔も久しぶり。健脚なお二人に、なんとか今日もついていけるだろうか。

銀杏峰は、去年からお互いに行きたい山で、ありがたいことに春にはご夫婦で下見登山もしてくださっていた。週間予報はずっと曇りであったが、今日は、お天気は上々の晴天となった。

宝慶寺の手前の道沿いに車一台分のスペースがあった。志目木谷にかかる橋の右岸から取り付くのだが、道からは2メートル程の雪の壁を登らなくてはならない。

橋の欄干に足をかけ体を持ち上げて登りついた。ツボ足で沢沿いを進むが、一昨日降った雪が30cmくらいあり、がぼるのですぐにワカンをつけた。

このまま沢沿いを進むと右岸尾根との落差が増すばかりで適当な所から尾根に登りついた。こんなことなら、尾根末端から登ってもよかったのだ。

谷側は雑木、尾根芯は植林である。そのうち林道に出会うと、林道から来られたらしい三人の山スキーのグループの人の姿が現れた。

林道分岐を左にとれば、やがて赤松の大木が現れ、その先から再び尾根に取り付いた。昨日の山スキーの踏跡の上を歩くと沈み方はましである。この調子ならツボ足でも歩けるかとワカンを外して歩いてみる。なんとか歩けそうだ。

尾根は植林が主体ではあるが、まだ木はそれほど大きくはなっていなくて展望はいい。再び別の林道に出合い、その上部の展望の素晴らしい所で山スキーの方々が休憩されていた。先ほどから、休憩毎に抜きつ抜かれつで挨拶を交わしながらの歩きだ。

振り向くと昨年の4月、雪山をご夫婦と歩いた越前甲(越前大日山)の真っ白な姿が目に入り懐かしく思いだす。あの日も快晴で、雪の甲から白山をはじめとする展望が、なんとも素晴らしかった。

再びワカンをつけて登っていくと、植林は終わり900mあたりから雑木とブナの尾根へと変わっていった。伐採で展望が良いといっても植林のあるところより、やっぱりブナの樹林は落ち着く。ほっとした気分で休憩とする。

ブナはその木肌も枝ぶりにもなぜか心ひかれる。木で無いと書いてブナと読むのは、利用価値の少ない木として振向かれなかった歴史を物語っているのだろうか。

今では、ブナの森の豊かさを知らぬ人はいないだろう。人間に直接的に役に立つというのでなく、もっと大きな自然の営みの中でブナは生きている。そういう風格がブナにはそなわっているように思えるのだ。

997mあたりからは、1300mへ登りあがる尾根のラインが見え、気分も開けてくる。南西には木々の向こうに銀杏峰の頭が顔を覗かせている。

南東の谷側のブナの木の陰があまりにも美しく一人尾根を外れて歩いた。

ここからは、展望のいい登りとなり、真っ白な荒島岳が頭をだして、その向こうには白山、越前甲と白い山並みが続いている。

左に展望、右にブナとミズナラの大木が目立つ尾根を登る。その先、尾根をトラバースぎみに歩く所では、慎重にキックステップをしないと滑り落ちそうだった。

1200mラインについた所で風が出てきたのでアウターを着がてら休憩をとる。スキーの方もここで休憩をされていた。1300mラインへの最後の登り、この先には霧氷が残っていた。今日は気温が高くパラパラバラバラと、霧氷が風に飛ばされて落ちてくる。

スキーの方が二人増え、また前後しての登りとなる。ワカンと山スキーも、尾根の登りではほとんどスピードは変わらないのだと思った。

1300mラインに登りつくと、広い広い雪原とすこぶるの展望が待っていた。新雪ががぼるので再びワカンをつけて歩く。ここからは、山スキーの方は速い。ワカンをつけている間に、その姿は小さくなっていった。

どこまでも広い雪の原を無心で歩けることが嬉しかった。ただただ景色の中に溶け込んでいくのだ。

ピッケルをついてもするっとぬける所がある。新雪が覆い隠していて見えないが、雪崩の前兆の亀裂が線をひいているのだ。Mさんと二人お互いに注意の声をかけながら歩くが、あっというまに足をとられ亀裂の中にはまり込んだ。

1314ピークあたりから尾根が痩せるのでアイゼンに履き替える。この先のトラバースは、クラストしていやらしい。まっさかさまに転げ落ちれば、登ってくることは不可能な谷が広がっている。I氏はMさんを気遣って、斜面でのピッケルの使い方とアイゼンの歩き方をあらためて教えておられる。

そんな微笑ましい姿を見ながら、夫婦っていいなぁとつくづく思った。病の再発というこれから幾年かの歳月を越えることができたなら、そんな幸せにめぐり合うことがあるだろうかと、これからの人生の淡い夢を描いた。


再び快適な広い尾根となり頂上の手前で、下山に使う松名尾根と合流した。冬にはいこいの森から、この尾根を登ってくるのが一般的なルートのようである。

山スキーの方々が、満面の笑みを浮かべてすべってこられた。もう下山のスキーなのだ。その歓声には、嬉々とした心がはじけていた。

一瞬の楽しみのために重いスキーを履いて登る。それがたまらない喜びに変わるそんな山スキーの喜びをいつかは味わってみたいと思った。今は、納屋に立てかけてあるだけの私の山スキーの板は今ごろ泣いていることだろう。

1440.7m、銀杏峰はもうそこだった。広い頂上台地からは、部子山の姿が美しく、漫遊の尾根の頂上には祠が海老の尻尾をつけて佇んでいた。

頂上からは、能郷白山・昨年ご夫婦と雪山を登った道斎山・憧れの縫ケ原・力強い荒島岳・頂に立ちたい経ケ岳・別山・白山・越前甲等、白い山並みがどこまでも美しく見飽きることのない風景が広がっている。

I氏は、人を景色にとけ込ませた山の写真が得意だ。3・4月のSハイ誌のグラビアの一枚をI氏の写真が飾っている。この写真には、昨年ご一緒させてもらった雪の金草岳を歩くMさんと私が写っている。

いつもにこやかで山では饒舌になるというI氏に、セルフタイマーで三人の写真を写してもらう。こんな時、嬉しさを一杯表現したI氏のポーズはいつも楽しい。

頂上直下で、風を避けてお昼とする。それぞれのお好みの具を入れたうどん鍋がぐつぐつと煮える楽しいひと時だ。

ランチが終わり後片付けをしていると、数人のパーティの方々が登ってこられた。まもなくまた別のパーティの方が登ってこられ、銀杏峰は山スキーにも雪山登山にも人気の山なのだとうなずいた。

もう一度、名残の展望を楽しみ下山にかかる。

見下ろす大野の平野は田んぼも畑も白い雪に覆われ、山々の尾根の末端の木々が黒く見えた。その風景は、山々がまるで雪の海に浮かぶ島のようであった。

松名尾根からは、部子山がまた違う角度で堂々として見えた。写真に写そうとカメラを向けたが、いつしか部子山方面は雲が広がり青空はきえていた。

ブナと雑木の林を、一気に下っていった。展望のピークに二人の登山者の姿が見える。いかにも満ち足りたように山並みを見ている二人の姿が一枚の絵になっていた。

ここから先は、ワカンを脱いでツボ足で下っていった。途中、展望の開けたところで地元の住人だというこのお二人に、あらためて山々の名を教えていただく。

福井の雪山2を開きながら、行きたいと願っている経ケ岳、その経ケ岳の三角が美しかった。

「黒く横に線のように見えるところが経ケ岳の池の大沢ですよ。」「こんな太いブナが立ち並んで美しい所です。」そんな話を聞きながらいつかそのブナに会いたいと思った。

霧氷に飾られたブナに、そして淡い葉をそよがせる春の芽吹きのブナに、錦秋の彩りのブナにと思いを馳せた。

「このあたりでお好きな山はどこですか?」「加越国境の山々もいいですよ。」

ミズバショウ・笹百合・ニッコウキスゲ・リンドウと花の時期には行った山々ではあるが、取立山〜大長山〜赤兎山へと続く山々の冬を私は知らない。ここもまた、行ってみたい山々の連なりなのだ。

展望を楽しむお二人に挨拶をして下山につく。大きなブナの木のそばでふたたび休憩をする。ブナの木の雪解けのふちにI氏が入っている。ここで写真を撮るためにI氏は足がかりを作ってくれたのだ。

ブナの根っこのふちにI婦人と私は入って顔を出した。どんな写真ができあがっているのか、旅の後の楽しみである。

この尾根の名前の由来である赤松の名木の前に、帽子が落ちていた。「さっきのお二人が落としたのかもしれないと、I氏はその帽子を拾って足早に追いかけてくださった。

雪が枝を弓のように曲げている木があった。

ふと見るとそこには小さな春が咲いていた。

「あっ、マンサクの花が」と、私。「ほんと、今年初めて見たわ。」とMさん。

「おとうさ〜ん。マンサクの花が咲いてるよ〜。」御主人を呼ぶMさんの声は春風のように温かだった。


2006年3月5日(日)銀杏峰
お天気・・・晴れ(当日気温高し)(金曜に雪が降り30cm〜50cmの新雪)
メンバー・・・I氏夫妻
コース・・・駐車地(7:00)――志目木谷右岸尾根――主稜線ジャンクションー(12:45)銀杏峰(13:40)――松名尾根――いこいの森――駐車地(16:15)
 

(機会があれば次回に登りたいコース)
今回I氏が別の候補と考えておられたもう一つ東の尾根
福井の雪山2に掲載の笹又峠から次郎九郎の池経由
福井の雪山1に掲載の銀杏峰から部子山の周遊

2006/03/15(Wed) 22:28:26  [No.1937]


とっちゃん、こんばんは。
銀杏峰、行ってきましたね。(^_^)
ここは私も気になりながら未踏の山。部子山と併せて周回したいと思っています。
この日はいい天気でしたね。福井の山らしく「がぼった」ようやね。(^^ゞ
それにしても地元の人がうらやましいねー。

                     山日和

2006/03/16(Thu) 23:42:00  [No.1945]


山さん、こんばんわ〜。

昨年、Sハイでお知り合いになり、その後も何かと親切にしていただいている、ご夫婦が、昨年春に下見登山までしてくださっていて、感謝しながらの山でした。

> ここは私も気になりながら未踏の山。部子山と併せて周回したいと思っています。

はい、その節にはお声をかけてくださいね〜。部子山は、未踏ですし次回ぜひ行きたいです。今回も、部子さんへのトレースは無く、ここを歩けば、足跡のない山が楽しめるし足がそっちに行きた〜いって言ってました。

> この日はいい天気でしたね。福井の山らしく「がぼった」ようやね。(^^ゞ
> それにしても地元の人がうらやましいねー。

ほんまほんま、地元の人たちにとったら、里山なんやろな〜。お出会いした、お二人がうらやましかったです。

2006/03/18(Sat) 19:56:45  [No.2021]


とっちゃん、おはようございます(^^)。

一昨日も昨夜も拝読させていただきましたm(..)m(^^)
ことちゃんの報告は、僕の山行報告とは大違いのとても良い感じの報告で、ホッコリします。
山日和さんといい、ことちゃんといい、その報告文はためていくとそのまま本にできそうですね(^^)。
銀杏峰もいつかは行ってみたいなぁ、と思っています。
いろんな所から来る山スキーの方々が当日沢山いるとなんとなく雪の雪原を独り占めした感じがなくなるので、
山スキーコースとしても人気の山は行くタイミング、登るタイミングが難しそうだな、とも思っています。

福井の雪山2、福井の雪山1、ともに枕元にいまもあります(^^)
パラパラ見ているばかりじゃダメなのだけど(^^;)

2006/03/17(Fri) 05:52:29  [No.1949]


矢問さん、こんばんわ〜。

> 一昨日も昨夜も拝読させていただきましたm(..)m(^^)
> ことちゃんの報告は、僕の山行報告とは大違いのとても良い感じの報告で、ホッコリします。

ありがとうございます。実は、一昨夜は、投稿はこれで最後にしようかなっと思っていたところでした。

読んでいただけて、ホッコリしてもらえたこと、ものすごく嬉しかったです。

> 銀杏峰もいつかは行ってみたいなぁ、と思っています。
> いろんな所から来る山スキーの方々が当日沢山いるとなんとなく雪の雪原を独り占めした感じがなくなるので、
> 山スキーコースとしても人気の山は行くタイミング、登るタイミングが難しそうだな、とも思っています。

そうですね〜。独り占めするには、人気がありすぎて、足跡やスキーの跡のない、素晴らしい景色に出会うのが難しいですね。
写真を撮る時には、やっぱり足跡のない雪原がいいなぁ〜と思いながら歩いてました。

でも頂上大地の雪原は一見の価値ありです。足跡には目をつぶって行って来てくださいね〜。

> 福井の雪山2、福井の雪山1、ともに枕元にいまもあります(^^)
> パラパラ見ているばかりじゃダメなのだけど(^^;)

私も、ぱらぱら見てるだけの一人なんです。なんせ、一人で雪山は行けないから。
こうしてご一緒くださる仲間には感謝感謝です。

2006/03/18(Sat) 19:52:03  [No.2020]


とっちゃん、こんばんは(^^)。

> ありがとうございます。実は、昨夜は、投稿はこれで最後にしようかなっと思っていたところでした。
なんで〜〜〜。だめですよ〜。

> 読んでいただけて、ホッコリしてもらえたこと、ものすごく嬉しかったです。
情景と心情がとてもよく伝わってきました(^^)

> そうですね〜。独り占めするには、人気がありすぎて、足跡やスキーの跡のない、素晴らしい景色に出会うのが難しいですね。
> 写真を撮る時には、やっぱり足跡のない雪原がいいなぁ〜と思いながら歩いてました。
僕も山日和さん位にパワーがあればそういう山にもいけるのだけど(^^;)

> でも頂上大地の雪原は一見の価値ありです。足跡には目をつぶって行って来てくださいね〜。
はい、いつかは(^^)

> 私も、ぱらぱら見てるだけの一人なんです。なんせ、一人で雪山は行けないから。
> こうしてご一緒くださる仲間には感謝感謝です。
ホントにそうですね(^^)

2006/03/18(Sat) 20:46:24  [No.2023]


矢問さん、こんばんわ〜。

鬼のかく乱かな?最近毎日9時ごろまで仕事で、疲れでちょっと気弱になっちゃってました。心配かけちゃってごめんなさい。

> 情景と心情がとてもよく伝わってきました(^^)

心情を昇華させるのがむつかしくって、つい駄文のままアップしてしまって、山の情景をだいなしにしたり、文を書くってむつかしい〜。

> 僕も山日和さん位にパワーがあればそういう山にもいけるのだけど(^^;)

矢問さん、十分パワーありますよ。ミッキーさんもパワフルだし、十分に色んな山楽しむ力持ってはりますよ。
私なんか、非力そのものですが。

> はい、いつかは(^^)

レポ楽しみにしてますね〜。

> > 私も、ぱらぱら見てるだけの一人なんです。なんせ、一人で雪山は行けないから。
> > こうしてご一緒くださる仲間には感謝感謝です。
> ホントにそうですね(^^)

山さん、洞吹さん、緑水さんみたいに一人では雪山行く力量がないので、ほんと、山をご一緒くださる方がなかったら、雪山は夢のまた夢なんです。

ほんまにありがたいその言葉につきます。

2006/03/18(Sat) 23:04:03  [No.2026]


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