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 台高山脈の最も有力な支稜のひとつである、池木屋山から東へ分岐
して迷岳へと至る稜線は、かつては激ヤブの連続で、通過には相当の
困難を伴う熟達者向きのコースと言われていた。
 時は移ってそれも今は昔。激ヤブの片鱗さえ窺えない快適な自然林
の縦走コースに変わっていた。

【日 時】2003年11月16日(日)
【山 域】台高山脈中部
【天 候】晴れ時々曇り
【メンバー】柳川洞吹氏、とっちゃん、山日和
【コースタイム】庵ノ谷林道終点8:20---9:00大熊谷ノ頭9:13---10:33白倉山
         10:53---12:13桃源郷のコバ12:25---12:42野江股ノ頭14:42
         ---15:04ナンノ木平---16:15江馬小屋林道

 針テラスでの初顔合わせの挨拶もそこそこに、一路蓮峡へと向った。
幸い先ほどまで時折強く降っていた雨も上がり、空には星も光り始めた。
江馬小屋林道終点にそれぞれのテントを設営。挨拶代わりの小宴の後早
々に就寝とした。

 週間天気予報は見事にはずれ、青空が広がっていた。ここから登って
庵ノ谷へ下りた方が歯ごたえがあるのだが、今日は逆コースで楽チン登
山とする。
 山日和号をここへデポし、とっちゃん号で庵ノ谷林道終点へ。
やや荒れ気味の路面をグイグイと高度を上げていく。
なにしろ林道終点は標高1000m近いのだ。
 大熊谷ノ頭から北西へ派生する尾根へ到達したところでストップ。
テープに白倉山登山口と書かれていた。左側は植林で食害防止のネット
が続いている。右は自然林で、尾根道はその境界上を進んでいく。
 野江股ノ頭方面の展望の良い右にばかり頭を向けていると首が痛くな
った。

 わずか40分で池木屋山から迷岳への稜線に到達。
大熊谷ノ頭というピークである。かつては熟達者向けと言われたマイナ
ーな稜線だったがずいぶんお手軽になったものだ。いささか拍子抜けし
てしまう。
 10数年前江馬小屋谷を遡行した時は下山に庵ノ谷を使ったのだが、そ
の当時はもっと下までしか林道がなく、(地形図にはなかったので林道が
あることすら知らなかったが)大熊谷ノ頭(その当時は半月岳と呼ばれて
いたと思う)の次のコルから庵ノ谷を下降。滝らしい滝のない、台高とし
ては珍しい谷だった。
 あまり人擦れのしていなかったこのピークも今や標識が鈴なりである。
林道を使い倒しておいて言うのもなんだが、これ以上延長しないでほし
いものだ。

 ピーク手前から自然林に変わっていたが、台高山脈の最も有力な支稜
であるこの稜線は伐採も入っておらず、ヒメシャラやブナを主体とした
美しい樹林が続いている。
 とっちゃんが「ヒメシャラの花知ってる?」と訊く。
ヒメシャラに花が咲くとは知らなかった。
木にはしょっちゅうお目にかかっているのだが、その艶々した木肌にば
かり眼が行っていた。もっとも花期は6月から8月らしく、その時期には
あまり行ったことがないので分からなかったのだろう。
来年はぜひとも会いたいものだ。

 比較的細い尾根のアップダウンが続いたあと、P1188のあたりでコバ状
の広がりを見せた尾根は白倉山へ向けて最後の登りにかかる。
その左には古ヶ丸山へ続く尾根上のピークが紡錘形の姿を見せている。

 白倉山頂上は確かに展望は良いのだが、所詮伐採跡である。
人為的に開けた場所というのは概して風情に乏しくあまり落ち着けない。
(先日の父ヶ谷高もそうだった)
展望には恵まれなくとも自然林の中のほうが趣きがあるというものだ。
ここも伐採跡特有のブッシュが少々うるさい。

 野江股ノ頭へ向う。稜線上はかなりヤブっぽく、右の江馬小屋谷源頭
をトラバースして行った方が快適に歩くことができる。
古いエアリアマップには、この稜線は熟達者向きのブッシュの連続だと
書いてあったが今はその勢いも衰えたのかヤブこぎというのもおこがま
しい程度のヤブしか残っていない。
 左を振り返ると古ヶ丸への尾根が激しく落ち込み大ギャップを形成し
ている。あのルートもなかなか面白いらしい。
 迷岳〜白倉山〜古ヶ丸山と結ぶ周遊ルートは以前からの懸案。
ギザギザの尾根を見ているうちにやる気がムラムラと湧いてきた。
 
 蛇足だが宮川村のHPによると、この3ピークを合わせて「大熊三山」と
いうらしい。これは聞き始めだ。しかも三山周遊のツァーまであったと
いう。
まあ、あるものは何でも観光資源にしようということだろうが、希望者が
いたのだろうか。

その2へ続く




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130. 【台高】白倉山から野江股ノ頭 その2
 2003年11月18日 火曜日 21時00分 山日和

 途中、岩場が現われ真新しいフィックスが下がっていた。右から巻
き道もあったが退屈しのぎに岩場へ上がる。
ロープはあってもなくてもという感じの何と言うこともない岩場だ
った。
 ほぼ真南にずっと見えている堂々とした台形の山が気になっていた。
方向からすると仙千代ヶ峰のようだ。(実はずっと国見山と間違えてい
たのだが)1100mほどの山だが、周りにそれより高い山がないので実に立
派に見える。主脈から遠く外れていることもあってこれまでノーマーク
だったがまた宿題が増えてしまった。

 洞吹氏ととっちゃんにウソの山座同定を教えながら進む。
(ウソをついているのではなく間違えているだけなのだが)
「ウソやウソや」と言った瞬間タイミングよく鳥が鳴いた。
「えーっ、あれが(鳥の)ウソ?」ととっちゃんが訊いて爆笑。

 1226mのピークで江馬小屋谷からの道を合わせる。ここが桃源郷の入
り口である。どんぐりを逆さにしたような野江股ノ頭を真正面に、立ち
枯れの木が目立つ斜面を駆け下りると素晴らしいコバが広がっていた。
茶褐色の絨毯を敷き詰めた疎林の広場は、何度来ても心落ち着くいい場
所だ。
 山頂は目前だがここでひと息入れる。山頂や名前の付いた場所でしか
休憩しない人も多いが、少ししか歩いてなくても、或いは目的地が目の
前でもいいところでは時間を費やす。これが本当に山を味わうというこ
とだろう。

 いい加減腹も減ってきた。最後の急登を我慢すればそこは台高一のお
気に入りの頂上、野江股ノ頭である。
倒れたまま幹が地を這うように横に伸びたブナは2本の太い枝を空に突
き上げている。ここでしか見たことがない素敵なブナだ。
 下生えのないゆったりとした疎林の山頂。木々が葉を落としたこの季
節でも好展望とは言い難いが、この癒しと安らぎの空間は展望と引き換
えにはできない。

 いつも通りのビールと鍋とコーヒーの時間が過ぎる。
とりとめのない話に気が付けばいつの間にか2時間も経っていた。
「もうええ加減下りなあかんで。」
 風が強く日差しがなくなると肌寒い。ようやく季節なりの気候になっ
てきたか。

 P1226を巻くように江馬小屋林道への尾根道に入る。ここも自由に歩け
る気分のいい樹林が続いている。
少し登り返したところがナンノ木平。
この森の主のようなミズナラの大木が見る者を圧倒する。

 野江股ノ頭を右に見ながらこの尾根を上がって行くのも格別のものが
ある。
まず大ミズナラの出迎えを受け、素晴らしい森の中の道で高揚した心は
あの桃源郷でひとつのピークを迎え、さらに山頂で歓喜の淵に溺れると
いう三段構えの美味しさなのだ。

 北西に分岐した尾根を急降下していくと、道は右斜面へ折り返すよう
に下り、やがて植林帯へ入る。ここからは暗い植林下の杣道。
手入れしてあるのが救いだが、これまでの美しい自然林とのギャップは
大きくつまらなく思えてしまう。
 植林の斜面へ入らず尾根を直進してみようかとも思ったが、末端がど
うなっているか分からない(台高では絶望的な岩壁にぶち当たることもし
ばしばである。)ので本日は安全策を採った。
 下から見ると上がれそうな場所があったので、また今度、まずは登り
で試してみることにしよう。
 
 植林帯を抜けると再び自然林の中を行くようになる。大きな岩壁を巻
くよう急斜面に付けられた道は、上部の樹林の尾根とはまた違った味わ
いがある。中間の植林帯をカットできれば完璧なコースになるだろう。
 沢音が大きくなるとやがて野江股谷と江馬小屋谷の二俣となった登山
口に到着だ。ここは実に雰囲気のあるテントサイトになっているのだが、
以前より木が少なくなっているように思えたのは気のせいだろうか。

 林道であの高度まで上がってしまうのは些かイージーに過ぎたが、い
いルートではあった。
しかし便利さと引き換えに何か大切なものを失ってしまう危険も孕んで
いる。できたものは今さらしようがないから利用する、ただそれだけで
いいのかということも考えさせられるルートでもあった。


              山日和




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131. Re: 【台高】白倉山から野江股ノ頭 その1
 2003年11月19日 水曜日 16時17分 緑水

山日和さん、こんにちは。
好いお天気に懸案の稜線山行楽しめたようですね。

> 山日和号をここへデポし、とっちゃん号で庵ノ谷林道終点へ。
>やや荒れ気味の路面をグイグイと高度を上げていく。

あの林道を車で上がったのですか、春にサンデーと迷岳まで歩きで有りました。
スタートが遅いから、陽の短い時はこれも方便ですね。
単調な所を長〜く歩くと色んな物の見えるし色んなこと思い浮かびますね。

> とっちゃんが「ヒメシャラの花知ってる?」と訊く。

タロボウHPでのとっちゃんですから花の事は熟知でしょうね。
夏ツバキに似たような花で木に咲くのはなかなか見ることはできませんよ。
落花は有るけど生花は見たことないです、色白の美女だそうです。
山日和さんの興味が広がるのが嬉しいです。

野江股ノ頭から宮の谷への尾根を降りてくれたら好いのに、山日和さんが筋道つけてくれると安心して歩けますです。
少しだけ変形する事も有るけどね。
何処かの疎林で落ち葉焚きにサンマの紫煙やりたいですね、今年はサンマ規定数まで食していないです、ハイ。

           緑水。

-- CMN v0.35β --




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133. Re2:【台高】白倉山から野江股ノ頭 その1
 2003年11月19日 水曜日 23時29分 山日和

緑水さん、どうもです。

>あの林道を車で上がったのですか、春にサンデーと迷岳まで歩きで有りました

迷岳への稜線もぜひ歩いてみたいものです。

>野江股ノ頭から宮の谷への尾根を降りてくれたら好いのに、山日和さんが筋道つけてくれると安心して歩けますです。

そのルートも頭に入っています。まずは登りに取ってからですね。
あの辺はヘタに下りると悶絶ものですから。

>何処かの疎林で落ち葉焚きにサンマの紫煙やりたいですね、今年はサンマ規定数まで食していないです、ハイ。

いいですねー。久々に緑水流サンマの開き方、拝見したいですね。(^_^)
ではまた冬枯れのコバで・・・・

                山日和




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132. Re:【台高】白倉山から野江股ノ頭 その1
 2003年11月19日 水曜日 22時49分 柳川洞吹

山日和さん とっちゃん お疲れさま。

野江股の頭、とてもいいところですね。
前回登ったときは、ガスの中で幽玄な雰囲気だったけど、
今回は手前の尾根から展望がきいて、
ほんとに、どんぐりを立てたような姿がよくわかりました。

最初に行ったときから、桃源郷付近の印象がすごく強かったので、
白倉山からの稜線も期待してたけど、
ちょっとすっきりしない感じでした。
でも、そこまで望むのは贅沢というものかもしれませんね。

山頂での2時間は、あっという間でした。
もっとも、最近は一人のときでも昼食休憩は2時間超えですが、
それでも、あっという間に時間が経ってしまいます。
歳を重ねてくると、なんと時間の経つのが早いことか。

少年の一日は永遠の時間(とき)を刻み
老人の一年(ひととせ)は一瞬の時間(とき)を翔ける

ああ、それでか。
最近、登山口で朝起きたら、10時や11時になってることが多いのは。
ちょっと違う?

下山路の尾根の直降ルートは、もし雰囲気のよいところだったら、
真中の植林帯をバイパスする好ルートになりますね。
こんどは「雪の野江股の頭」を訪ねてみたい気がします。

よい山旅を!
                 洞吹(どうすい)





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134. Re2:【台高】白倉山から野江股ノ頭 その1
 2003年11月21日 金曜日 12時37分 山日和

洞吹サン、どうもです。

>ほんとに、どんぐりを立てたような姿がよくわかりました。

どこから見ても印象的な姿ですね。遠目で見た山頂付近の樹林の透け具合がなんとも言えませんでした。

>白倉山からの稜線も期待してたけど、
>ちょっとすっきりしない感じでした。

ぜひ主脈を歩いて下さい。明神から笹ヶ峰のあたり、ホウキガ峰から池木屋のあたり、山ノ神から馬ノ鞍、、父ヶ谷高から山ノ神、ほんとにいい所です。(^_^)

>歳を重ねてくると、なんと時間の経つのが早いことか。

ほんまやねぇ。

>ああ、それでか。
>最近、登山口で朝起きたら、10時や11時になってることが多いのは。
>ちょっと違う?

それはただの寝坊や。(^_^;)

>下山路の尾根の直降ルートは、もし雰囲気のよいところだったら、
>真中の植林帯をバイパスする好ルートになりますね。
>こんどは「雪の野江股の頭」を訪ねてみたい気がします。

これはぜひ試したいですね。緑水さんリクエストの宮ノ谷右岸尾根とつないでトライしてみようっと。
雪の時期もほんとにいいですよ。今年の1月に行きましたが抜けるような青空の下、ひっそりと冬眠に入ったブナ達が輝いて見えました。

ではまた新雪の稜線で・・・・(ちょっと早い?)

             山日和

2006/03/18(Sat) 17:56:43  [No.1998]


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