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  流木の杖・・・・白滝谷

流木をひろって杖にしているグループに会う。沢でのこんな光景を始めて見た私は、目をみはった。

中でも、一人の老人が、流木の杖をつく姿はひときわ目をひいた。このグループの三人の女性もまた、老人と同じように、流木を杖にしながら歩いている。

「こんなお天気では、私たちだけかと思っていましたら、あなかがたも沢登りですか。」とその中の一人の女性が、声をかけてくださる。「はい、私たちもそう思っていましたよ。」「どうぞお気をつけて。」と言葉を交わす。

その老人は、一見足元も不確かなように見え、他人ごとながらなんだかとても心配になり、ついつい振り返ってしまう。
しかし、彼はこのグループのリーダーらしく、中年のもう一人の男性がサブリーダーとして、仲間の世話係をしているといった様子だ。

小雨降る今日ではあるが、沢を歩ける喜びにはなんのかわりもなかった。樹林の中は、緑一色に染まり、雨がまた緑を洗い、しっとりとしてそれもまた美しいと思う。
桂の大木はいくつも幹をわけて株立ちになり、かわいらしいハートの葉を震わせている。

白滝谷、美しい名前のこの谷は明るくて入門の谷と聞きながら、今まで遡行のチャンスがなかった。

車止めチェーンには鍵がかかり、ここから林道歩きだ。ウツギの花や、エゴの白い花が林道に散っている。3年前だろうか、口の深谷を遡行した時、入渓した場所はしっかりと覚えていた。林道終点から少し歩いて、いよいよお目当ての白滝谷に入った。谷に木橋がかかり登山道が渡っている。

明るい花崗岩の沢は、私のお気に入りである。小滝をいくつか越えていくが、ただただ私は、滝や水と戯れることが嬉しい。遡行図を見ないで、なんにも考えず、沢に身を置く。沢と一つなる。そんな歩き方が好きで、水に触れたい、岩に触れたい、滝に弾ける飛沫を眺め、光に煌く飛沫を浴び、釜の静けさに身を浸したいと、楽しみを拾うように流芯を歩いていく。

白石谷出会いにかかる布ケ滝を見送り楽しく遡行を続けるると、クルミ谷との出会いとなり、右岸には牛コバからの登山道が寄ってきている。
小滝を登っていくと、ナメの先に白滝が姿を現す。この谷の名をもつ白滝の、釜を抱いて流れ落ちる姿は美しい。釜の左をへつってロープを出してもらい、水流へ向かって斜めに直登するが、上部は水際がぬめっていたので、左へ振って乾いた壁を直上した。そして、またその先には三段12mの美しいナメ滝に出会う。

 次に、特徴のある斜滝15mに出会うが、右岸を快適に直登する。その後も、へつったり、巻いたり、また直登したりと滝をいくつも越えていく。

 やがて、なかなか見ごたえのある二条二段18mの滝が眼前に現れる。
小雨も止み曇り空の下、この滝を眺めながらお昼ご飯とする。この滝が登れそうで、嬉しくなる。左の滝沿いから中央の岩へと登っていく。最後で念のためのお助け紐を出してもらう。ふと、下を眺めると、さきほどのグループの方々が、滝下に姿をみせる。

 ここで、トップは、あの流木の杖のご老人ではないか。それも肩にはぐるぐる巻きに重たいロープを巻いて、流木の杖を手放さず、立ち上がる時は、この岩場でも杖をついている。

その形容しがたい姿は、ますますインパクトをもって、迫ってくる。後続の女性陣も次々と登り、ラストを中年の男性が登ってきた。

フィナーレ、二条25mの堂々とした夫婦滝が、エメラルドの釜に向かって白い流れをおとしていた。木々の緑に、映えるその姿を眼下に眺めながら、左岸の探勝道を登り、お堂に出た。ここで、靴を履き替えていると、先ほどのグループも到着。

「今日はよう遊ばせてもらった。」その言葉に、いくつになっても心底沢を楽しむ仙人のようなこの老人の心意気と、健康で沢を歩けることへの感謝の気持ちが入り混じった、いやいや、そんな説明は一切必要のない無垢な喜びそのものが現れていた。

こんなふうに、年を重ねながら私も沢を山を楽しんでいきたいと、つくづくと思わせるそんな笑顔に見送られ、ひたすら登山道を下った。その小柄の仙人は70歳を越えた、神戸のとある山の会の方だということだった。

明日があるかは誰にも分からない。今日この時は二度とない今である。一つの沢も一期一会、沢人と歩く今日も一期一会。そして、見知らぬ人とのこんな一期一会の出会いもまた、心に残る沢であった。

小雨の中にも関わらず、一人では行けぬ沢を共に歩いてくださる沢人に心から感謝して、今日という一日の幕を閉じた。あの木々の緑のシャワーの中で。

2005/07/20(Wed) 01:57:39  [No.396]


tottyann こんばんは

流木の杖の老紳士。
いや、もう仙人そのものですね。
こんなふうにいつまでも飄々と野山を歩き回っていたい……そう思います。

この白滝谷は、私が登山を始めて間もないころ、
師匠の山日和さんに頼んで、沢登り初体験に連れて行ってもらった谷で、よく覚えています。
そのときは、奥の深谷とダブルヘッダーでした。

よい山旅を!
                       洞吹(どうすい)

2005/07/20(Wed) 22:32:29  [No.401]


洞吹さん、こんばんは
>
> 流木の杖の老紳士。
> いや、もう仙人そのものですね。

洞吹さんも、70歳になったら、お髭伸ばして仙人登山してね〜。

> この白滝谷は、私が登山を始めて間もないころ、
> 師匠の山日和さんに頼んで、沢登り初体験に連れて行ってもらった谷で、よく覚えています。
> そのときは、奥の深谷とダブルヘッダーでした。

そうなの?。じゃ思い出深いんだね。

奥の深、まだ懸案のままです。今年ぜひ行きたいよ〜。
沢が好きだなぁ〜とつくづく思うのです。

2005/07/27(Wed) 00:11:40  [No.421]


tottyann、こんばんは。
白滝谷は何度も訪れていますが、何回行ってもいい谷ですね。
そこそこのスケールと美しい流れ、(ただ上流はびわこバレイなので水は飲めませんが)直登できる滝群。
行き先に迷った時には「困った時の白滝頼み」で期待を裏切らない谷です。
この日は天気が悪くて残念でしたね。ピーカンならもっと積極的に水に入る気になったのにね。
あのお爺さんは印象的でした。最初はおかしなパーティーやと思ってましたけどね。
いつまでもああやって山に入りたいものです。

                    山日和

2005/07/27(Wed) 01:04:09  [No.422]


山日和さん、こんばんわ〜。

> 行き先に迷った時には「困った時の白滝頼み」で期待を裏切らない谷です。

ほんとうですね〜。お天気がすぐれず、行き先に迷いましたが、おかげさまで楽しい遡行ができました。

> この日は天気が悪くて残念でしたね。ピーカンならもっと積極的に水に入る気になったのにね。

どんどん、流芯を歩いていくのが好きなので、できることならお天気のいい日が最高なんですが、沢に身をおけるだけでも嬉しいです。

> あのお爺さんは印象的でした。最初はおかしなパーティーやと思ってましたけどね。
> いつまでもああやって山に入りたいものです。

そうですね〜。とても印象的で、見知らぬ人との出会いにも感動しました。

2005/07/28(Thu) 22:18:12  [No.428]


tottyann、おはようございます(^^)

> 流木をひろって杖にしているグループに会う。沢でのこんな光景を始めて見た私は、目をみはった。

この前のオッサン3人組で行ったメンバーも僕以外は良く流木を杖にしてますよ(^^) 特にtottyannもご存じの仙人様と呼ばれる域の方もいますし〜(^_-)
最初、読んでいて「ここにも仙人様は行ってたのかな」と思ってたら「老人」とでてきたりしたので違うとわかりました(^^;)

> 車止めチェーンには鍵がかかり

鍵までかかっていましたか・・・。前は入れたのだけどね・・・。

>  ここで、トップは、あの流木の杖のご老人ではないか。それも肩にはぐるぐる巻きに重たいロープを巻いて、流木の杖を手放さず、立ち上がる時は、この岩場でも杖をついている。

我が仙人様とよ〜く似たお姿ですね(^^)
歳をとってもいつまでも良いところには行きたいものですね(^^)。

2005/07/29(Fri) 05:41:09  [No.434]


矢問さん、こんばんわ〜。

> この前のオッサン3人組で行ったメンバーも僕以外は良く流木を杖にしてますよ(^^)

あの時は、残念しましたが、思い切っていけばよかった〜。

矢問さんは、杖つかないんですか?うむうむ、おっさん三人組で、杖ついたらどんなお姿かな〜?

 特にtottyannもご存じの仙人様と呼ばれる域の方もいますし〜(^_-)

佐野仙人も、杖が板についてますね〜。藤川谷で、ここにも仙人がいるんだって、おもいましたよ。(^o^)

また、ご一緒よろしくお願いしま〜す。(*~o~*)

2005/08/02(Tue) 22:20:40  [No.452]


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